あーちゃん2006年Birthday!

あーちゃんの頭にいったい何がっ?

by ぽたっちさま




 はうっ!
 朝一番、部屋に響いたのは僕の叫び声…だと思う。

 せっかくの休日、そして僕の誕生日。

 実は、ママンが変な気をきかせてくれたようで、なんとあの浅井先輩が僕の家に来るらしい。

 楽しみだわ!って言ったママンの顔が妙にしたり顔だったのはこの際置いといて。

 僕は目下、重大な問題を抱えている!
 生死に関わるかといえばそうでもないんだけど、僕にとっては大問題!

 ここでさっきの叫び声になるわけなんだけど…
 朝起きて顔を洗うべく洗面所に行こうとした僕は、ふと、鏡に目をやった。

 そこに映ったものは…



「ねっね…っネコ耳--------っっ!?」


 自分の頭にちょこんと主張しているかのように生えているネコ耳に、僕はまだ寝ぼけているのかと思い、ぶるぶると頭を振ってみた。

 でも、くらくらするだけでネコ耳は頭についたまま。

 今日はエイプリルフールか、はたまたいたずら好きのママンの所為なのか、いろいろ考えてみたけどますます分からなくなって、僕はとうとう座り込んでしまった。


 どうしよう…今日は浅井先輩が来るのに。こんな姿じゃ呆れられる!

 こんなとき葵先輩だったら『見て見て!ネコ耳生えちゃった〜!ラッキー!』とか言って楽しんじゃうのかもしれないけど、生憎僕はそんな対処法を知らない。


 どうしよう……。


 それから僕は苦肉の策として、とても安易だけど帽子を被ることにした。

 ママンには家の中なんだから脱ぎなさいって言われたんだけど、寒いからいいでしょ?ってちょっと強引にお願いしてみた。

 ママンは仕方ないわねって笑ってたけど、とりあえずその場凌ぎにはなったかな。

 でも浅井先輩が来たら…。


 とってもそわそわしていたから勘違いされたのか、ママンにそんなに気になるなら迎えに行ったら?って言われたからそれを利用しない手はない!とママンの提案に飛びついた。

 携帯で駅まで迎えに行きます、と連絡を入れるのを忘れずに…。




 さすがに冬休み中は人通りも少なく、僕ははやる心を落ち着かせて駅へ急いだ。

 するとちょうど浅井先輩が改札から出てきたところで、僕を見るなりあの優しそうな笑顔で微笑んだ。

 それだけで、僕は……



「急いで来なくてもよかったのに」

 そう先輩は言いながらポンポンと僕の頭を撫でてくれた。
 あったかくて大きな手。


「ん?それにしてもめずらしいな、お前が帽子被ってるなんて」

「うっ」

 ママンと同じように突っこまれて返事に詰まった僕を変に思うようなこともせず、行こうか?とうながされて僕たちは家に向かうことにした。



 家に着くと、先輩はママンの熱烈な歓迎を受けて少々びっくりしていたようだけど、やっぱり僕と違って社交的なのかな…なんて思ってますます尊敬してしまう。

 そんな僕をママンはばっちり見ていて、目が合うとパチン!とウィンクされた。えーと…。



 食事の用意が出来るまで僕の部屋で寛いでもらうことになって、ママン手作りのパイでおもてなしをすることにした。

 先輩は僕の部屋に興味津々で、いろいろ質問してきたけど僕はなんて答えたのかあまり覚えていない。だって、大好きな人がこんなに近くにいるのに平常心じゃいられない。


 そんな僕を見る先輩の目はいつも優しくて、ゆっくりでいいんだよって教えてくれてるよう。

 やっぱり大人なんだな…って思ったそのとき、
「帽子脱げないくらい寒いのか?」って言われたと同時に先輩はこともあろうか帽子を、ネコ耳を隠す為に被った帽子を脱がせてしまったんだ。

「せっ先輩っっ!!!」

「…え?」



 数分、いや数秒、僕たちの間に沈黙が走った。


 先輩は目をまん丸に見開いているし、僕は僕でパニックになって真っ青だし、情けなくて涙が出そうになった。


「…藤原…それは……」

「知りませんっ!朝起きたら生えてたんですっ」

 僕は半ば逆切れを起こしかけていた。

「……」

 すると、先輩は、落ち着かせるかのように殊更優しく僕を抱き寄せて頭を撫でてくれていた。

 そうしているうちに、ありとあらゆるものが削げてなくなっていくかのような感覚になった。

「不安だったろう?もう大丈夫だ」

 その優しい声音は不思議と僕を穏やかな気持ちにさせてくれる。やぱり先輩は凄いな…。




 先輩に抱かれているうちにどうやら寝入ってしまったらしい。

「なんだ、寝ちゃったのか?」

 意識の遠くの方で先輩の楽しそうな声が聞こえた。

 なんかいろいろ話しているのに僕は睡魔には勝てなくて、
「こんな可愛い子ネコちゃんなら大歓迎なのにな」
という先輩の爆弾発言を聞かなかった僕は幸せかもしれない。

 だって、そんなこと言われたら恥ずかしすぎて僕はきっとどうにかなっちゃう…。



その後、先輩の腕の中で目覚めた僕はもちろん先輩に平謝り状態だったのだけれど、なぜか先輩は上機嫌で、それだけが救いだった。

そして、あれほど僕を悩ませたネコ耳はあとかたもなく消えていて、なんだか狐につままれたかんじで釈然と来なかったけれども、先輩の”お誕生日おめでとう”の言葉に、まあいいか、と自己完結していた。

 きっと先輩のおかげだから。

 先輩、大好き…。



おわり

ネコ耳愛好家協会・同士のぽたっちさま、ありがとうございました〜!
ネコ耳のあーちゃんをみた瞬間の、祐介の心の葛藤が手に取るようでした。

『食べてしまいたい!』

ええ、ええ、いつか幸せにしてあげますとも。
い・つ・か…ね( ̄ー ̄)

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しかしなんですな。
葵ってば、3つも下の後輩に、行動パターンを読まれてますよ(笑)
葵がネコ耳になったら、悟はどうするんでしょうねえ。
え? 耳が舐めやすくなってイイ?
いやだわ、悟ってば。
(言ってないっ! by 悟)