『あーちゃん イブの奇蹟』
イブの夜、僕は毎年来てくれるサンタさんにありがとうの意味を込めて、ベッドサイドのテーブルにミルクとクッキーを置いておくんだ。これは、小さい頃ママンに言われてその通りにしたら、翌日きれいになくなっていた代わりにプレゼントがあったので、すっかり信じてしまったんだ。 今でもやってしまうのは、まだ夢を見つづけていたい気持ちがあるからかもしれない。 でも、今年のサンタさんは少し事情が違ったようだった。 「あらあら、お父さんたらワイン飲みすぎでつぶれちゃったわ!仕方ないわねえ」 いつもよりかなりのハイペースで飲んでいたお父さんは、ソファーの上ですでに夢の国へと旅立ってしまったようだ。 これじゃあサンタさんは無理かな、代わりにママンかな、なんて思っていたんだ。 結局、お父さんはソファーで寝かせることにして、僕はママンにお休みを言って部屋に入った。 サンタが誰であろうと、僕のことを考えてくれるのだから嬉しいことに変わりはないと、そう思って明日の朝を楽しみにもう寝ることにした。 いつもなら朝までぐっすり、のはずだったんだけど、かすかに風が入りこんできたような気がして寝返りを打ったその時、部屋に人の気配がした。 閉めたはずの南側に面した窓から黒い影が部屋に入ってきて、一瞬泥棒?かと思ったけど、薄暗い部屋の中、かすかに赤色が見えた気がして、僕はすぐにサンタさんだと思い、ベッドの中でじっとしていた。 今年は手が込んでいるなあ、なんて思っていると、サンタさんは枕元に来て、プレゼントを置いてくれた。 好奇心からそっと薄目を開けて見れば、想像していたのと違って、結構体格がよさそうだった。お父さんでもなく、ママンでもなく…でも、何となく知っているような感じもしたけど、僕は起きているのがばれないように、すぐ目を閉じてしまったんだ。 それから、サンタさんはベッドサイドにあったミルクとクッキーをたいらげて、添えてあった僕の手紙を読んでくれたらしい。僕は、ちょっと緊張がほぐれたのか、次第に眠りに引き込まれて…… 夢うつつの中、僕は頬に降る柔らかな感触と、僕の名を呼ぶ優しい声を聞いていた…。 数年後、偶然にも僕が当時、サンタさんに書いた手紙を愛しい人の部屋で見つけたときは、あの予感は当たっていたんだと、心が甘く満たされると同時に、愛しさで一杯になった。 今日はクリスマスイブ。 また、サンタさんに手紙を書こう。 |
うー、心がぽかぽかに温まる素敵なお話です〜O(≧∇≦)O
それにしても不憫キング、なかなかやるじゃん( ̄ー ̄)
ぽたっちさま、ありがとうございました〜!