『偶然の恋、必然の愛』

【17】〜【18】
そして、旅の始まり〜エピローグ




【そして、旅の始まり】


 シーヴァの王宮で数日を過ごし、カイルは辞去する旨をラルフに告げた。


「カイ殿には何とも言葉では言い表せない程、お世話になりました。本当に、どうやってこの気持ちを言い表せばいいのか…」

 何を以って礼を表せばいいのかと尋ねるラルフにカイルはふと思い立って一つ提案をした。

 しかしそれに対する答えは…







「カイル、国へ帰られるとは本当ですか!?」

 王子の、いや後は即位式を待つばかりの新王の御前、という事実をすっかり失念したリィは目の前の男に詰め寄った。

「ああ。そろそろ行かなくては、な」

「しかし、僕はあなたに何一つ恩をお返しできていません」

 それでは気がすまない、とリィはカイルの胸倉を掴む。

「それは…貰ったと思うが?」

「あ、あれは…しかし、カイル…」

 カイルの貰ったと言い張るものに思い至ったリィは恥ずかしさのあまり頬を紅く染める。


「ならば、もう一つ言ってもいいか?」

「…何でしょう?」

「今、ラルフ殿にも言ったのだが…シーヴァの人間を一人、貸してくれと言ったら「直接交渉をして欲しい」と言われたのだ。どうだ、来ないか?」

「しかし、私は…」


 カイルが色々言ってくれたことはちゃんと理解し納得もしている。
 しかし政治的なことが絡んでくると感情だけではどうにもならないこともあるのだ。


 リィはカイルからラルフへと視線を動かす。

 自分のような――証拠を消したとは言え――ある意味中途半端な地位の人間を国外へ出すはずがない。

 いや、それどころかどうして今も自由に行動できるのか――軟禁されるくらいのことは覚悟していたのに――リィにはそれが不思議でならない。


「お前、またぐだぐだ考えているのか?」

「いえ、そう言うわけではありませんが…」

 耳元で「また何も考えられないようにしてやろうか」と言われ、リィは慌ててそれを断る。



「丁度いい。リーンには頼みがある」

 リィは養父の話を聞き終えてすぐに神官を辞めることを神殿とラルフに願い出た。
 そしてそれは――渋々ながらも――受理された。
 だから今のリィはただリーン・ディアナスという名の個人でしかない。


「我が国のために諸国を巡り、見聞を広めてきてもらえないか。本来なら自ら諸国を巡りその国々の利点を肌で学ぶべきなのだが、生憎僕にはその時間がない。そこでその役目をリーンに頼みたい。神官を辞めたと言っても、リーンは僕の教育係だろう?」


 つまり事実は闇に葬り去られ、リィは今以てラルフの配下ということだ。


「ラルフ様…」

「と言うわけでカイ殿、彼をお貸しいたしますが…ちゃんと返して下さいね?」


 今までリィに語りかけていた王としての口調はどこへやら、ラルフの言い方は年相応の、しかも茶目っ気たっぷりなそれに変わる。


「貰ってはダメか?」

「ダメです。やはりこういうことは然るべき交際期間を経てからでないと」

「しょうがないな。ではその件に関してはまた改めて申し込むとしよう」


 貰う…
 交際期間…


 二人だけが解った上で話している言葉の意味するところに思い至り、リィは顔を真っ赤にした。






【エピローグ】



「さあリィ、行くぞ!」

 マントを翻し進むカイルをリィは慌てて追いかける。


「カイル」

「ん?」

「どこへ旅をするのですか?」

 首を傾げるリィにカイルはにやりと笑いかける。


「さあ…取り敢えずは太陽の後を追いかけるか?」

「月の影を踏まないように進むのですね」

 リィはふわりと笑った。

 幼いあの日に偶然交わされた二人だけの約束。


「なあ、リィ」

「はい?」

「俺たちの約束は…最初の出会いは偶然、だよな」

「そう、ですね」


 一度目は運命の女神のいたずらか。


「二度目も…再会も偶然だよな?」

「僕はあなたがどこのどなたかも知りませんでしたし、あなたは僕がサナトリアに向かうことなど知り得なかったですからね」


 ならば二度目は女神の気まぐれといったところか。


「ではこの先は、何だ?」


 約束を果たす二人の第一歩は


「…必然、かな」

 二人は目を合わせると大きく頷き、そして共に歩き始めた。



おわり

【あとがき】


 長々と駄文にお付き合いいただき感謝感激雨霰!!←古っ

 …コホン、え〜冗談は置いといて。
 最後までお付き合いいただき、ありがとうございましたm(__)m
 この話は彼らが旅立って一応終わりです。

「一応」ってナニ?

 とか、

「某章の夜のシーンの次がないぞ」

 とか言われそうですが、この話はホントにこれだけしか書いてないんですぅ〜(滝汗) 

 自分でも「伏線張りっ放しで忘れてるぞ〜」という部分があるのは承知してるんですが、力尽きました(爆)

 それらを補完するネタだけはメモであるんですが「話」にまとめ上げるだけの力がないもので(^_^;)ゞ
 
 こんな穴だらけの話でしたが、読んでくださった皆様の心に一文なりワンシーンなりでも残ることができたら幸いです(^^)

読んでくださった皆様、そして掲示板やもも♪さま宛メールに感想を書いてくださった皆様、本当にありがとうございましたっ!


 最後になりましたが、見知らぬ方々に読んでいただいた上に感想までいただけるというとってもとっても嬉しい経験をさせてくださったもも♪ちゃまに最大の感謝を込めて…チュっv(笑)


                            2005.8.12  朝永 明


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えへへ。もも♪です、お邪魔します(^^ゞ

めいちゃん、お疲れさまでした。

『見せろ見せろ』と騒いで読ませてもらい、
『UPさせろ』と脅して強奪してしまいました。
我が儘な私を許して〜(笑)

ま、『某章の夜の続き』も気になりますが、
カイルとリィの『これから』も大いに気になるところですので、
また気が向いたら何かエピソードでも書いてやってくださいませv
誰より何より、私が楽しみにしています!

では最後に、せっかくですので、
めいちゃんが書いた『あとがき』第一稿をお披露目して締めくくりたいと思います。


「最後まで読んでくださってありがとうございました。めいは普通の女の子に戻ります」
と、涙を拭いペンと原稿用紙を残して去ってゆく。



…この元ネタわかんない人、います?

きゃ〜ジェネレーションギャップだあああ〜!

オチのないまま、おしまいv