天使?悪魔?怪獣・・・? by K次郎さま |
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『それじぁ、朱実ちゃん三日間あの子達の事お願いね。』 そう云って加奈子さんが家を空けてから今日が最終日… 「はぁ〜…まだかしら?……」 あたしの背後で鳴り響く大音響に、頭痛を覚える。 時計を見ては「はぁぁぁぁ」と零れ落ちる溜息が 現在の時刻は深夜、うとうと仕掛けてたら行き成り起こされて 「…あと数時間…あと数時間頑張ればっ」 今から加奈子さんが帰ってくるのが待ちどうしい。 ベビーベットでは、骨肉の争いが繰り広げられていた。 【一日目】 『うっわぁぁぁんんんん。ふっ…ふえっ…うっううええぇ〜〜ん。うぎゃああ〜〜〜〜〜んっ』 さっきまではニコニコと3人揃ってオレンジジュースを飲んでいはずが……行き成り始まった、赤ん坊の大合唱 台所で洗い物をしていた手を止め、リビングへ行くと 「やだっ、なにがあったの?……」 長男の悟ちゃんは、手にした『コップ』から上手くジュースを飲めずに癇癪を起こして? 次男の昇ちゃんは、頭からジュースを被ったようで、キラキラと金色に輝く髪が汚れてベタベタに? 三男の守ちゃんは、悟ちやんに与えた筈のジュースの入った『哺乳瓶』を手にしていて? 見るも無残な状況で、一向に泣き止まない3兄弟の大合唱…これは一体??? と、とにかく状況の分析よりも汚れた服を着せ替えてさせなければ 手際よく汚れた服を脱がして新しい服を順番に着せていく…辺りを片付けて全て終わった頃には、泣きつ疲れたのか3人で一箇所に固まり安らかな寝息をたてる姿はまるで子猫の赤ん坊のようで、さっきまでの騒々しさが嘘のように天使の寝顔を惜しみなく見せてくれている。 「可愛い〜♪」 (……?それにしても一体何が有ったと云うのかしら??) 【二日目】 「はぁ〜、やっぱり食事の時が一番大変ね」 何をするにも一緒な赤ん坊3人は、悟ちゃんにご飯を食べさせるのに掛かり切りになれば、昇ちゃんと守ちゃんは拗ねてむずかるし、だからと言って同時に食べさせるのはさすがにね〜 「育児ってホント体力勝負だわ」 赤ん坊は可愛いけど眺めるだけと世話をするのじゃ天と地の程の差があるのよね。 だからと言って辞めたいなんて思ってないけど 数々の難関(?)を突破してやっと辿り付いたこの職業 しかも、あたしの勤め先ってぜっー―たいっ理想も理想、こんな美味しい仕事は無いってぐらい凄いのよ!! 何が凄いって? だってだって、聞いてよ!この兄弟まだ赤ん坊なのに『美形』揃いなのよっ こんな美形兄弟何処を探したってそうは居ないわ、それに凄いのはこれだけじゃないのよね〜〜 悟ちゃんのお母さんがこれまた美人でプロのピアニスト、一児の母とは思えないぐらい体系も良いし 昇ちゃんのお母さんってのが、有名なハーピストで(だったかしら?)しかも金髪、碧眼のビスクドールのような顔立ち 守ちゃんのお母さんってのがこれがまた有名なアメリカ人のオペラ歌手。あっもちろんこの人もかなりな美人さんなのよ …で、一番凄いのはお父さん、同じ時期に3人もだなんて、しかも美人ばかり…(いやんっ罪な男って感じ?) けどホントに凄いのはまだ若いのに世界的にも超が付くほど有名な指揮者って事かしら羨ましい位に豪華よね。 まさに音楽一家って感じでハイソよね〜 あっそれでお父さんはね…『美形』とは言いがたいけど”それなり”の男前よ…一応ね これでお父さんが文句なしの『美形』だったら”美男美女”で見た目にも美しいのに〜。ってよりも美女3人も侍らしたハーレム? (やだっ、イケナイ妄想が) まあ、それを補うだけの才能に溢れてはいるんだけど――ちょっとそけれだけが残念かしら? でも!?子供たちは全てお母さん似で『逆紫の上作戦』なんてのも良いかも…ふふふ 将来優良株ばっかりで目移りしちゃうわv (ホントこんな美味しい職業他にはないわよ♪あたしの天職だわvv) 「さぁてとっ」 赤ちゃんたちもお昼寝してる事だしこの後何してよう? うーんと確か、昨日やり掛けてた絵本作りの続きがあったのよね。どこまで書いてたっけかなぁ あたし、これでも絵は上手いのよ。前にちょっとだけやってたサークル活動で出版社の人に声を掛けて貰って挿絵の仕事とか少しだけした事も有るんだから。 ―――え? どんな本ってそれは聞かないでねv で、何処までだったけ? あ、そうそう金髪天使の赤ちゃんが天(そら)から降ってきて、その赤ん坊を見つけた指揮者の卵の音大生が、金髪天使の赤ちゃんに導かれて天上の音を探していくって云う所まで書いてたのよね そうと決まったら、鞄から色鉛筆と画用紙を出して…ふふふ、どんなお話にしようかしら? 『ううっうぇ〜〜〜〜んっ。ひっうふっぎゃぁぁぁぁぁ。あっぎゃうぅ〜〜〜〜っっ』 なんて思ってたらあたしも一緒になって寝てしまったみたい 「え? なに? どーしてまた泣いてるの」 あの後音大生が天上の音を見つけて行くのに連れて天(そら)から降ってきた金髪天使が天上でのホントの姿を取り戻していくって云う折角良いアイディアが浮かんでたのに しかも、起こされたのが昨日に引き続き3兄弟の大合唱って? 今日はいったい何なの〜〜??? 大人しくいい子で寝てた筈なのにぃ〜 「ぁぁよしよし、悟ちゃん、昇ちゃん、守ちゃんいいだから子だから泣かないでね」 3人の中で一番小さくて軽い悟ちゃんと次に小さい昇ちゃんを両腕に抱いて、少しだけ二人より体格のいい守ちゃんはおんぶして (うーん、困ったわ…) 抱えた3人が泣き止むまで数十分、リビングとべビーベットがある部屋とを何往復したのか (重い…もういい加減泣き止んで) やっとの思いで泣き止ませた3人をベットに戻す。…とすうすうと気持ちよさそうな寝息が聞こえて 「はぁ、もうっ、腕が痺れる」 1人ずつ泣いてくれれば良いのに、1人が泣けば当然のように伝染して一斉に3人でこんな風に泣かれたら堪んないわ。 それにしても、何をするにも一緒ってこういう時に困るわよね。 「判るものなのかしら、寂しいのかな? そうよね〜不安じゃないわけが無いわよね…」 いつもはこんなに泣いたりしないで3人で仲良く遊んでくれてて、殆ど手が掛からないのに。 昨日、今日でまだ二日しか経ってないのに、加奈子さんが帰って来るまでまだ一日有るのよ。 (…お母さんが居ないの気づいちゃったのかなぁ〜) あたし1人じゃ持たないわ…『ふぅ〜』と思わず溜息が零れちゃう。 頑張るしか無いのよね。二日間で一気に5歳も年をとっちゃった感じ? 「赤ん坊って気配に敏感だって言うし」 その時寝入ってしまった昇ちゃんの手に、悟ちゃんのお気に入りの哺乳瓶が”しっかりと”握られている事に気力を使い果たしてたあたしは気がついてなかった。 【三日目】 「はい、午後の便で来るんですね。分かりました。気をつけて帰ってきてくださいね」 向こうの午後の便で帰って来るってことは、飛行機がつく頃日本はまだ朝…!? 今日一日よ!これを乗り越えればあたしも立派なベビーシッターになれるわ。 「明日の朝にはお母さんが帰ってくるわよ〜」 うんうん、今日は大合唱が無いわね。このままいい子で一日を終わらせてね君たち。 それにしても…守ちゃんは男の子ね。ミニカーで遊ぶなんて、昇ちゃんは絵本が好きよね〜…で悟ちゃん。 「い〜ゃん可愛い♪」 ラブリ〜〜〜! 自分より大きなミッキーの縫ぐるみを抱いておしゃぶりしてる姿は一番年上なんて思えないわっ。 日本人の子供は成長が遅いって言うけど、一番年下に見えちゃうv お肌はつやつやぷにぷにで、柔らかくて……さわり心地がイイのよ〜。 それに守ちゃんも昇ちゃんもおしゃぶりはとっくに外れてるけど、悟ちゃんはまだだし。それがまた危うい感じで 真っ黒な目がうるうると潤んでるのは、ほんとマニアには堪らないわよ。 一番誘拐されやすそうよね。人見知りはするけど、意外と懐きやすいし。 やっぱり将来は……うけ…っっと、じゃなかった。(ヤバイ、やばい、変な妄想に走る所だったわ) 「さぁ、明日はお母さんが帰ってくるから、早く寝ましょうね」 ポンポンと一定のリズムを取りながら、眠りを促すために子守唄を歌ってあげると、直前まで遊んでいたから疲れていたのかあっという間に寝入ってしまった。 (いつもこれ位、手の掛からない子達なのに、あの二日の惨劇は何だったのか?…ふぅ〜。まぁ、いっか。明日が楽しみだわ、あたしも早く寝よっと) 【加奈子ママ、帰還】 お日様も昇り始め、今日はゴミの日だったらしく慌しげにゴミを回収していく収集車が通る中、とある家の前でタクシーが一台止まった。 タクシーからは若い女性――誰も彼女が3児の母だとは想像も付かないだろう――が下りてきた。 タクシーが去るのを確認してから、彼女は家の中に入るとまず真っ先に1階にある子供部屋へと足を運ぶ。 『だぁ、だぁ、』 「昇は早起きね。」 ふふふ、と母親の顔をして起きていた子供を抱き上げる。 「…んっ」 (誰か居るの? 声が聞こえるけど……) 『きゃっ、きゃっ、』 『いい子にしてた?』 『ま、まぁー』 「えっ!?」 (うそ、加奈子さん) 「おはよう、朱実ちゃん。三日間ありがとうね」 時計を見ると午前9時過ぎ、完璧に寝過ごしてしまった。 「1人でこの子達の相手をして疲れたでしょ」 「…いえ、みんないい子でしたよ、ただ加奈子さんが居ないのが寂しいみたいで何時もは泣かない子達が泣いてましたけど」 「あらあら、朱実ちゃんを困らせたらダメじゃないの」 プロ失格だわ、帰ってくるのが分かっていたのに寝過ごすなんて、ボサボサ頭に寝起きで顔がむくんでるし。 だけと加奈子さんはそんな事ちっとも気にせず何も言って来ないから、こーいう時はさらに居心地が悪いのよね。 今だってあたしが寝過ごした事を責めもせずに、昇ちゃんを抱っこしているし。 『ぅんーだぁ』 「あら、守もお目覚めみたいね」 あたしは昇ちゃんを受け取り、加奈子さんが改めて守ちゃんを抱っこする。 隣にいた存在がいなくなった事に気づいたのか悟るちゃんも目をさました。昇ちゃんをベットに戻し今度は悟ちゃんを抱き上げる。 「守、あなた何を持っているの?」 加奈子さんの言葉に守ちゃんの手もとを見れば…どこから手に入れたのかカエルさんの絵が書かれた悟ちゃんお気に入りの 「これ悟ちゃんの哺乳瓶ですよね?」 『あぅ、あぅーーっ』 悟ちゃんがバタバタと腕の中で暴れ出して、子供の力って手加減が無いから結構痛いのよ。 「いたっ…悟ちゃんどーしたの」 「守それは悟の物よ、返して上げなさい」 思わない厳しい声で守ちゃんを諌めて加奈子さんが言った。 え? それってどう言うこと、どしーて守ちゃんがその哺乳瓶を持ってるのよ? 加奈子さんなんで怒ってる? その前にどーにかしなきゃ……聞きくまで大人しくして欲しいのに。うわっ、悟ちゃんが泣きだしそう。 (泣かないでよ〜。お願いだから) 「朱実ちゃん、この哺乳瓶を悟に渡してちょうだい、そしたら大人しくなるわよ」 はい〜? あたしサッパリ意味が分からないんですけど、どーして守ちゃんが悟ちゃんの哺乳瓶を持っていると泣いちゃうの? あっ、放って置かれてる昇ちゃんも泣き出しそうだわ。昇ちゃん放って置かれるの嫌うから 「守、ダメよ。自分より小さい子には優しくしなきゃ」 …って、加奈子さん守ちゃんは弟なんですよね? 『うっ…うぇ、くっ、ひっうくっ』 お願い泣かないでっ!? 「守ちゃん、悟ちゃんの哺乳瓶返してね」 守ちゃんの手から哺乳瓶を取ろうと悟ちゃんをベットに戻したら 『うっぎぁ〜〜〜〜〜んっっ』 いっやぁーー。やっぱり泣いちゃったぁぁぁ。あたし何もしてないわよ? お母さんだって帰ってきたのに そして連鎖反応で、抱っこされてご機嫌だった守ちゃんまで泣き出してしまい。 「遅かったみたいね。」 ふうっ、て溜息を加奈子さんが付いて。遅いって…なにが遅いの? もしかしてと思い 「お腹すいてたんでしょうか」 「違うわ」 聞いてみたけど、キッパリと言い切られしまった。それじゃぁ? (あ、癇癪まで起こし始めたわ) あたしのイマイチ良く分かっていない様子に加奈子さんが苦笑い気味に答えを教えてくれた。 「悟は、お気に入りの哺乳瓶を取られると泣いちゃうのよ」 (タオルケットを齧っちゃダメーーっ) 「はい?」 哺乳瓶? …悟ちゃん? 「加奈子さん?」 「昇と守はおしゃぶり抜けが出来たけど、悟だけはまだ見たいなのよね」 おしゃぶり? …抜けって…誰が? 「一番の甘ったれだし、身体も小さいでしょ? だから直ぐに泣いちゃうのよ。二人に負けちゃって」 そりゃあ、悟ちゃんは一番小さいし、可愛いけど…この中で一番のお兄ちゃんよね。 「守がね。悟の事を自分の弟だと思ってるみたいな所があってね…たびたびわざと泣かせる為に悟の大事な物取ったりするから、なお更…」 「あ、でも昇ちゃんと守ちゃんが悟ちゃんの面倒を見てる事がたまにあります」 「でしょ? 同じ年なのに、二人にとっては悟は小さい弟みたいに見えるみたいなのよ〜。だから可愛さあまって、て所なのか分らないけど良く構ってね〜。だけど悟は自分がお兄ちゃんだと思ってるから二人にお兄ちゃん顔をされるのが嫌みたいで」 くすくすと笑いながら、加奈子さんが「まだ哺乳瓶も手放せないくせにね」なんて言った。 まあ、3人の中で一番のお兄ちゃんが弟扱いなんて嫌よね…お兄ちゃんのプライドって所なんだろうけど、哺乳瓶とられて泣くんじゃ…ねぇ〜? 「…って事は、その。泣いてた理由」 「たぶん…」 困ったように、だけど間違いないと言う口調で肯定してくれた。 意味を理解するのを脳が拒否して、数秒固まった末、あたしは叫んでいた。 「そんなのって有りなんですかぁあああああ!?!?!?」 余りな理由だわ…思わず声を大にして叫んでしまったじゃないの。 (いや〜。物は壊さないでっ) 遠くで一段と素晴らしい大音量の大合唱が響き渡っているのが聞こえる気がしたが、今はもう関係ない。 「余りでしょ? 私もそう思って何度か試してみたのよ」 「試す…って?」 (あ、悟ちゃんに突き飛ばされた守ちゃんが木枠に頭をぶつけてる。…いったい何処にそんな力がある訳?) 「悟の哺乳瓶を隠して見るとか、オレンジジュースを哺乳瓶じゃなくマグカップにいれてストローで飲ませてみるとか、一番いけなかったのは昇か守に哺乳瓶を握らせる事だったわ、渡してそれを見た瞬間に大声で泣いてしまったのよ」 (昇ちゃんまで、髪の毛引っ張っちゃダメよ、将来ハゲになっちゃうじゃない) だけど結果は同じだった…と。溜息を付きながら説明してくれた。 ―――はぃ〜? ―――って事は、何ですか ―――今までのも全部 ―――哺乳瓶が無いから ―――泣いてた…と ―――悟ちゃんは ―――それにつられて ―――昇ちゃんと守ちゃんも ―――泣いてた…と (あっ、爪が引っ掛かって血が出ちゃった) そう言われてみれば、あの時も、その次の時も…悟ちゃんの手に哺乳瓶が握られていなかったような (…気がついちゃった。手に持ってるオモチャこっちには投げないでね) ぼーぜんと立ち尽くすしかないわよね? だって、だって、だ、だって、加奈子さんが居なくて寂しいから泣いてたと思ってたのよ? (…反撃にでたわ?! 負けて無いわね…小さい身体のくせして、やっぱりお兄ちゃん?) その事について聞いてみたが―――。 「それじゃ、お母さんが居なくて寂しくて泣いてた訳じゃ?」 「無いわね。この子達がそれ位の事で泣くわけないわ」 うーわー。そんなにキッパリ肯定しないで下さいよぉぉ〜〜 (おおー。取り返した。でも悟ちゃん……そんなに哺乳瓶が大事なの…?) あたしの苦労って…いったい… ―――シクシクシク ムナシイ…この仕事向いてないのかしら、そこまで考えたくなっちゃうわ、こんな理由だなんて 『ガチャーンっ!? ポカポカポカ』 『ギゃース! うわぁぁぁぁ』 『だぁーだぁー?! あぐぅ〜〜〜』 『教訓』子供は天使? 悪魔? 怪獣?(字余り) あ〜、後ろで怪獣の暴れる声が… |
End |
K次郎さまからいただきました、あの3兄弟の赤ちゃん話でした〜! この頃は『寝てれば天使、起きれば怪獣』だったんでしょうね〜。 さて・・・今は・・・・・・・・・。くすっ。 K次郎さま、ありがとうございました〜! さて、もちろんこれでは終われません! ペロさま、登場〜! |
素材提供:かあちゃんのお道具箱
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/4404/