「裏聖陵学院物語:禁断の412号室〜もしも葵がベッドの下段で寝ていたら…」


「おはよう、葵」
「おはよ」
「はよ」

 次々に優しい声をかけられて、葵はゆっくりと目を開ける。

 入学したての学校、そしてその寮の一室で迎えた初めての朝。

 4人部屋は2段ベッドが二つ。
 葵は入って右側の下の段で眠っていた。
 同室の3人が葵の顔を覗き込んでいる。
 今日は入学式だ。


 
「ほら、葵」
 正面から祐介が葵の身体を抱きかかえた。
 細いその身体は難なく抱き起こされる。

「だ、大丈夫だよ、祐介…」
「いいから…」
 祐介は葵のパジャマのボタンを一つずつ外していく。

 徐々に露わになる白い肌。
「葵…綺麗だね…」
 背後から涼太がそっと葵の背を撫でた。

「あ…っ」
 くすぐったさに、小さく声を漏らしてしまい、葵は慌てて口をつぐむ。

「さ、着替えような」
 陽司がTシャツを葵に被せる。

「今日は少し肌寒いから…」
「風邪ひいちゃいけないからね」

 3人は、葵が何も手を動かさずとも、器用に次々と制服を着せていく。

 最後に祐介が慣れた手つきでネクタイを結ぶ。
「さ、出来たよ葵」

 葵の手を祐介が取る。
 涼太がその肩を抱き、陽司が愛おしげに髪を撫でた。

「あ…あの」
 葵が不安げな声をあげた。

「なに?」
 3人とも返事をする。

「こ、んなにしてもらわなくても、僕、一人で何でもできるから…」
 最後は消え入りそうな声で…。

「葵、心配しなくていいよ」
「僕らは葵を守りたいだけ」
「そう、それだけだから」

 僕を守りたい…?
 それはどういう意味?

「僕…」
 言いかけた葵の唇を、祐介の長い指がそっと押さえた。

「いい? 僕らから離れちゃだめだよ」
 意味の分からないまま、小さく頷く葵。

「いい子だね」
 



 
 無事入学式を終えたその夜、葵はふと寝苦しさを覚え、ぼんやりと目を開けた。

 体が重い…。
 何かが覆い被さっているように…。

 頬に何かが触れた。
 くすぐったさに葵が首を竦めた。

「あおい…」
 耳元で囁かれた声…。
 それは…。

「ゆうすけ…?」
 頬に触れたのは祐介の髪で…。

「なに、してるの…?」
「起こしちゃったね、ごめん」
 少ししっかりと目を開けてみると、涼太と陽司の姿もある。

「じっとしてるんだよ」
 いいながら、陽司がパジャマのボタンを外し始めた。
「ようじ…?」

「心配いらないから」
 涼太が葵の前髪をそっと掻き上げて額にキスを落とした。
「りょうた…?」

 一人一人の名を呼ぶにつれ、葵の中に広がる漠然とした不安。
 何? 何をするの…。
 6本の手で、葵は易々と身につけている物を剥がれた。

「や…何するの…っ」
 もがく葵。けれど、そんな葵を押さえつけているのは3人で、しかも葵よりずっと立派な体格で…。

「ごめんね…こんなつもりじゃなかったんだけど…」
「葵の寝顔があんまりにも可愛くって…」
「我慢できなくなっちゃったんだ…」  

「な…っ」
 抗議しようと開いた口は、祐介の唇で覆われた。

「ん…っ」
 柔らかくあわせるだけの口づけが、やがて角度を変えながら深くなっていき、震える唇を割って、祐介の舌が侵入してきた。

 葵は祐介の背を打った。
 しかしその手もまた、涼太と陽司に捉えられて。

 祐介の舌は、まるで美味しい蜜を舐めるように葵の口の中を自由に動き回る。
 苦しさと恐怖から、葵の目尻に涙が溜まり、ポロッと落ちた。

「祐介…葵、泣いてる…」
 そう言ったのは涼太の声か、陽司の声か、今の葵にはわからない。
 声をかけられた祐介は、漸く葵の唇を解放した。

「ごめん、葵…でも…」
 その口は葵の涙も舐め取る。

「好きなんだ…」
「そう、俺たち葵のこと、好きなんだ」
「だから、許して…」

 何を許せといっているのか、朦朧とした中で考えても、すぐに答えを出すことなど出来るはずがない。

 何も言わない葵の口を、今度は涼太が奪う。
 押さえつけられて、何の抵抗も出来ないままその行為を受け入れる葵の身体が、跳ねた。

 身体の中心に誰かが手を触れた。
 そしてそのまま握り込まれ、労るように愛撫を施される。

 両方の胸の飾りも、同じように誰かが触れてきた。
 体中をいくつもの手がはい回る。

 しかし、声をあげる葵の口は塞がれたままで。

 絞り出すように唸っていた葵の喉が、やがて違う音をたてはじめた。
 涼太が唇を離す。

「はぁ…あ…」

 明らかに濡れた声。
 3人は嬉しそうに微笑むと、さらに葵の身体を追い上げにかかる。

 胸の飾りを音を立てて吸い、舌先で舐め上げると、葵の身体がどんどん淡いピンクに染まっていく。
 そして張りつめていく葵の欲望に、誰かがキスを落とした。

「あ…や…ぁっ」
 跳ねる腰を押さえつけられ、暖かく湿った感触が葵自身を包んだ。

「や…やだぁ…」
 けれど、葵の抵抗など、3人の前には無いに等しく…。

 やがて葵は全身を硬直させて、熱の固まりを解放した。
 そして訪れる虚脱感。
 葵は薄い胸を大きく上下させて、また一つ涙を零した。




「いい、かな…?」
 陽司が祐介に聞いた。

「うん…」
「じゃあ…」
 祐介がそっと葵を抱き起こした。

「や…っ、もう、離し…て」
 首を振って逃れようとする葵の背後に陽司が回り、背中からがっちりと抱き留める。
 そして前に回された手は、飽くことなく葵の身体を辿る。
 涼太の指が葵の涙を拭い、祐介が葵の足を抱え上げた。

「葵、暴れちゃダメだよ。傷ついたらいけないからね」
 その言葉に、葵が怯えた表情を見せた。

「大丈夫。大人しくしていたらすぐに気持ちよくなってくるからね」
 あやすように、耳元で陽司が囁いた。

 身体を固くする葵に、涼太と陽司の4本の手が、快感を促すように煽る。
 葵の気が逸れた時、祐介の指が葵の中に侵入した。 

「ひぁっ…」
「大丈夫、葵。大丈夫だから…」
 涼太が葵の顔中にキスの雨を降らせ、助けを求めるように伸ばされた手を、指を絡めて握り込む。

 その間にも祐介の指は、葵の中で蠢いて、執拗に内壁をまさぐっていく。

「やめ、て…おねがい、だか…ら」
 葵が頭を反らせて白い喉を晒す。
 その喉を涼太がペロッと舐めたとき、葵の身体がビクンと震えた。

「ここだ…。…ここだね、葵のいいところ…」
 祐介が嬉しそうにその部分を引っ掻くように責める。
 指を増やし、何度も何度も出し入れして、葵を柔らかくしていく。

「いやぁ…あ…はぁっ……」
 葵自身がまた熱を持ち始める。
 涼太がそれに手を添えて、さらに葵を煽る。

「祐介、もう…」
 陽司の言葉に、祐介は神妙な面もちで頷き、涼太を見た。

「涼太…」 
「ああ、わかってる」
 涼太は片手で葵自身を愛しながら、もう片方の手でその頬を撫でた。
 幾筋も伝う涙。
 それをそっと拭ってやる。

「ごめんな、葵。辛いのはほんの少しだけだから…」
 涼太の言葉に、陽司の両腕が、力を込めて葵の上半身を抱きしめた。

「好きだよ、葵…」
 そう言ったのは、祐介であり、涼太であり、陽司であり…。

 涼太の唇が、葵の唇を塞いだ。
 喉を塞ぎ、声を封じるかのように、舌が差し入れられる。

 また溢れ出す葵の涙。
 何か熱いものが自分に押しつけられたのを葵は感じた。
 そして…、それが侵入を始め…。

「ん…んんっ…」
 声を奪われている葵が、喉を締め付けたように呻く。
 涼太と陽司が、慌てたように葵の身体を宥めにかかる。

 そして祐介は…。
 葵の最奥を求めて、グッと腰を突き上げた。
 徐々に繋がりを深くし、狭い葵の中を拓いていく。

「あおい…すご……ぃ…」
 祐介が掠れた声で呟いた。
 そして、絶え間なく腰を進めていく。

 やがて葵は静かになった。
 涼太が漸く唇を離す。

「………」
 泣き濡れた瞳が涼太を真っ直ぐに捉えた。

「好きだよ、葵」
 涼太もまた真っ直ぐに見返す。

「葵…」
 祐介が熱い息のまま葵の名を呼ぶ。

「す…き…?」

「そう、葵のことが好きだから」
 陽司が告げたとき、祐介が一際強く、葵を突き上げた。

「あ…っ…ん…」
 恐怖と痛みばかりではないその声に、3人の瞳が歓喜に満ちる。

 そして、葵のきつい締め付けに、祐介はさらに強く葵の腰を引き寄せて、自分の熱を葵の中に解放した。  

 荒い息を継ぐ祐介に、陽司が促すように声をかける。

「祐介…」
「待って…」

 祐介はすぐに葵からでようとはしない。
 まだ少し、葵の中にいたい。

「祐介ってば」
「ん…わかってる…」

 葵はその後、涼太と陽司も受け入れた。

 意識を手放しそうになると引き戻され、何度も浮遊しては、つき落とされるような感覚を味わい、ようやく目を閉じることができたのは、誰かに抱かれて浴びた、シャワーの暖かい湯のおかげだった。

 そしてその夜、葵は祐介の腕の中で眠った。





  
「おはよう、葵」
「おはよ」
「はよ」

 次々に優しい声をかけられて、葵はゆっくりと目を開ける。

 入学したての学校、そしてその寮の一室で迎えた二度目の朝。

 体がだるい。

「葵、大丈夫?辛い?」
 祐介が葵を抱き起こす。

「僕…」
 昨夜の出来事はいったい何だったのか?
 夢ではないはず。それはこの体のだるさがそう教えているから。

「無茶してごめんな。これからはちゃんと葵の負担を考えて…その…」
 陽司が照れくさそうに鼻の頭を掻いた。

「少なくとも、一度に…なんてことしないようにするから」
 涼太が真顔で言う。

 葵が真っ赤になって俯くと、祐介がふわりとその身体を抱き寄せた。

「葵…誰よりも、好きだから…」


END


ペロ様からいただきましたリクエストです〜!

やはり本編で葵くんを上段に寝かせたのは
正解だったということで(笑)…。

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